地域の力私たちは地域の方の生活を支え、安全面には人一倍気をつけて送り届ける

宮津市社会福祉協議会 日ヶ谷支会(宮津市)

活動開催日
平成23年3月1日~
活動者数
5人(運転ボランティア)
利用者数
利用会員14人(H31.3月現在)
活動場所
養老、府中地区
活動頻度
第1.3木曜日
活動内容
病院の送迎及び買い物支援

今回の取材先である宮津市養老地区の「公民館バス停駅」に到着すると、秋晴れの空と太陽の光に照らされた若狭湾が広がり、温かい風が心地よく吹いていました。

公民館の近くには「養老診療所」とスーパーが並んでいます。その診療所の方角から、表情を和らげ、足取り軽く「おはよう」と声をかけてくださったのは、日ヶ谷支会の支会長、石田弘司さんです。石田支会長は、日ヶ谷支会の支会長を務められ、本年度で12年目を迎えられます。今回、取材をさせてもらった「送迎サービス」にも立ち上げから関わっておられ、住民からの信頼も厚く、常に「地域のために何が出来るか」を考えておられる方でした。

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〜住民にとって必要なものは自分たちで生み出す〜

活動のきっかけを尋ねると「あの時から始まったんだ」と昨日の出来事のように石田支会長が語り始めました。

時は平成22年までさかのぼります。この年の9月に開催された宮津市社協と日ヶ谷支会の地域福祉懇談会で、「移動手段の確保」が生活課題として挙げられました。日ヶ谷地区には、病院もスーパーもなく、病院へ行く手段はコミュニティバス。しかし、朝と夕方のみの運行で、昼間の時間帯の運行がなかったため、多くの住民が非常に不便を感じていました。

そこで、「困っている住民の課題を改善したい!」という思いから、「送迎活動の実施・充実化」に向けて、日ヶ谷支会役員と宮津市社協職員のメンバーでこの年の10月から5カ月間検討会を行うとともに、宮津市行政へコミュニティバスの増便要望も粘り強く行ってこられました。さらに12月には、地域住民に送迎活動の必要性についてアンケート調査を実施。また、地元で運転協力者も募りました。アンケートは自治会長を通じて全戸(当時103世帯)配付した結果、返事があった85世帯のうち、半数以上の45世帯から「利用したい」という回答があったことから、「これはやらないといけない」と決意を固められました。そして、翌年の平成23年2月、「送迎活動の開始及び利用者の申込募集」を全戸配布したところ、27人の利用申込があり、運転者協力者も11人確保することができました。これを受け、同年3月1日から住民が待ち望んだ「日ヶ谷福祉送迎活動」がスタートしました。

現在、送迎活動は毎月第1.3木曜日に行っています。午前は「養老診療所」を出発し、利用者を自宅まで送っています。午後は事前に予約された利用者を対象に、府中地区方面へ金融機関やスーパーの間を往復で運行されています。

〜自分の得意なことが地域で喜ばれる「よろこび」〜

石田支会長をはじめ多くの方々の熱い思いから始まった送迎活動は今年で9年目を迎えました。取材した日、運転ボランティアをされていた荻野さんにも取材を行いました。荻野さんは活動の立ち上げ時から関わっておられる一人であり、地域でも評判の大工さんです。その腕前は今も健在で、以前、送迎で利用していた車は、車高が高く、足の不自由な方にとっては、乗車時に転倒リスクがあったため、木を使った昇降用ステップを作られました。そのステップは足元に不安があった利用者に特に喜ばれ、大活躍しました。使われなくなった今でも大切に保管されています。

荻野さんに運転する際に気を付けている事を尋ねると、「高齢の方を乗せているので、車の運転を行う際は背筋がピシッと引きしまりますね。勿論、スピードには気をつけるし、カーブや車の乗り降りにも気を張っています。利用者の最高齢は96歳です。特に買い物等で重たい物を購入された時は代わりに荷物をお持ちし、家の中まで持っていくようにしています」と語られ、一人ひとりの身体の状況に合わせて、きめ細やかな対応をされている様子を伺うことができました。

〜送迎サービスの日が待ち遠しい〜

荻野さんが運転する車が出発するまでの間、利用される方々が病院横のスーパーに集まっていました。楽しそうな皆さんの輪に混ざり、感想をお伺いしたところ、たくさんのお話を聞かせていただきました。ある方は、「坂道で距離もあるため、車がないと金融機関や買い物にも行けないの。本当に助かるわ、ありがとう」と活動への感謝の気持ちを伝えられ、ある方は、「急で狭い登り道を車で送ってくれる。慎重かつ安全に運転してくれる運転手さんに感謝です」と荻野さんへのお礼を口にされました。そして、「この日が待ち遠しい。楽しみで仕方がない」と笑顔で心境を語ってくれる方もいました。

〜この活動の意義は、地域の営みや暮らしを守ること〜

石田支会長はこの活動について、「地域の方が困っていることに対応できる活動を行っているという自負があります。この活動は利用される方々の顔も見えるので、『今日も元気そうだ、前回と変わりがなくてよかった』という安心感が私たち活動者にも芽生えます。地域には一人暮らしの高齢者が多く、運転免許を返納された方も多いです。『私たちの活動が日々の暮らしや生活を支えている』と思うと、長く続けていくことが必要と思っています」と一言ずつ言葉を噛みしめるように語ってくれました。「地域を支える」という言葉は、その地域の日々の営みや暮らし、命を守るということ。

石田支会長は、その言葉の重みをしっかり受け止め、今日も養老診療所の駐車場で、利用者に温かく声をかけます。「気を付けて帰りや」と。その言葉にはきっと続きがあるはずです。「来週また元気で会おうね」と…

〜相手を思いやり、共に支え合える地域を目指して〜

今後の活動について、石田支会長は表情を引き締め、「誰もが平等、安全に暮らせる地域を作るためにも、可能な限り続けていきたいです」と話されました。その言葉は、決意表明のようにも聞こえました。

日ケ谷地区は、高齢化率が60%を超え、孤独死も緊迫の課題となり、1人暮らし高齢者等の方をどのように支えていけるのか…。地域の担い手や運転手も70歳代が多いため、いつまで続けられるか…。そんな悩みを抱えながら活動をしていた石田支会長のもとに、来年度から6路線のバスが廃止する連絡がありました。

 「国や市役所に働きかけて移送の予算を確保していく必要性を感じています。私たちも、勿論頑張っていきますが、若い方で地域の役に立ちたいという志がある方は是非声をかけてほしいです。一緒にすみよい地域を作っていきましょう」最後にそう締めくくられたのが印象的でした。 

予算の確保も勿論大切な要素ですが、何より大切なのは、役員の皆さんと地域住民が積み上げきた日ヶ谷支会の文化「相手を思いやり、共に支え合える地域」への想いではなかろうか。日ヶ谷支会は、決して歩みを止めることはないだろう。そこに送迎サービスを必要とする利用者の笑顔がある限り。

活動者からのメッセージ

「国や市役所に働きかけて移送の予算を確保していく必要性を感じています。私たちも、勿論頑張っていきますが、若い方で地域の役に立ちたいという志がある方は是非声をかけてほしいです。一緒にすみよい地域を作っていきましょう」

社協のひとこと

来年度で10周年を迎える送迎支援は日ケ谷地区の住民からも厚い信頼を得て、活動を行っておられます。これからも日ケ谷支会と社協が連携しながら地域のために何ができるのか考えていきたいと思います。